ストレステストは茶番劇 ── 原発再稼働には広域の住民の同意が不可欠

いま、私達は日本を脱原発させるまたとないチャンスを握っています。今後、日本で新規の原発建設も、老朽原発の建て替えも極めて難しくなったことは、自民党の谷垣総裁さえも認めています。建て替えも含めて原発の新設がなくなれば、放っておいても既存の原発が老朽化して廃炉になるにつれて原発は減って行き、ついにはゼロになります(フェーズアウト)。今後の争点は「いつ脱原発を達成するか?」という問題です。

フェーズアウトでは遅すぎる

フェーズアウトでいつゼロになるかは、原発の寿命を何年にするかで決まります。建設当初25年前後とされていた寿命は、経済性追求のために40~60年に延長されようとしています。最新の北陸電力志賀2号機の運転開始が2006年ですから、何もしなければ原発が無くなるのにあと35~55年もかかることになってしまいます。

原子力委員会の「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」は、昨年10月に「日本で過酷事故が起きる確率は500炉年に1回」(原子炉1基を1年動かすと1炉年)と試算しています。これは、福島第一・第二原発を除いた日本の44基の原子炉が動き続ければ、約11年後には再び大事故が起きるということです。そうなれば、日本という国の根幹が壊滅するでしょう。つまり、フェーズアウトを待っていたのでは遅すぎるということです。今年5月には、日本のすべての原発が定期検査などで運転を停止する予定ですが、その再稼働を絶対に許してはならないのです。

 欠陥多いストレステスト:批判を無視して「妥当」宣言

これまで「絶対安全」と言ってきた原発が大事故を起こしたのですから、従来の安全審査は完全に間違っていたということです。政府としても、再稼働を許可するためには、従来の安全審査を超えるチェックを行なわないわけにはいきません。この状況は海外も同じで、原発に批判的な世論が強いEU当局は「ストレステスト」という手続きで福島原発事故のショックを乗り越えることを考えました。

たとえば、集会所の折りたたみ椅子にちょっと太目の人が座ったところ、椅子が壊れてケガをしたとします。それを見た周りの人は、当然、自分の椅子は大丈夫かと、力を入れて揺すってみたり、押してみたり、ふだんならめったに掛からないような負荷(ストレス)を掛けて、壊れないか確かめるでしょう。ストレステストもこれと同じで、東日本大震災とそれによる津波のように、設計基準をはるかに超えるような「極限事象」(地震、洪水・津波など)が起きた時に、原発が設計基準の何倍まで耐えられるかを、シミュレーションによって確かめようというものです。各々事情や思惑はあったのでしょうが、これに渡りに船と飛びつき、そっくり真似したのが日本の菅前首相と経済産業省でした。

ただ、ストレステストについては、当初からEU内部から鋭い批判が出ています。欧州議会緑の党会派が前ドイツ原子力安全委員長に委託した報告書は、その欠陥として、①対象から外されている重要事象が多い(大型旅客機の墜落、テロ、複数の事象の組み合わせ、老朽化など)、②テストとその評価の期間が短すぎる(ちゃんとやるには原子炉1基当たり数年必要)、③テスト結果を評価する基準がない(設計基準の何倍なら安全といえるのか?)、④独立性がない(テストの実施、評価機関がすべてこれまで原発を推進してきた機関)などを挙げています。結局、ストレステストは福島原発事故後も原発を動かし続けるための茶番劇でしかないというのが現実的な見方です。日本でも、大飯原発3・4号機について関西電力が行なったストレステストについて、原子力安全・保安院は、意見聴取会で出されたテストの不備を指摘する多数の意見を無視して「妥当」とする審査書を提出しています。

 広範な自治体住民の意見を反映すべき

政府・民主党内部の駆け引きは微妙とはいえ、野田政権は再稼働にいつゴーサインを出してもおかしくない状況です。再稼働を止める最後の関門は地元自治体の同意です。福島原発事故で、いったん大事故が起きれば、従来想定されていた10キロ圏をはるかに超える地域が被害を受けることが明らかになりました。再稼働をめぐっては、原発の立地自治体だけでなく、被害を受ける可能性のある自治体すべての住民の同意が必要なのは当然です。この新しい原則を市民の力で確立することが、今後原発の再稼働を押し止める大きな力になるはずです。

(「消費者リポート」1505号より:共同代表・真下俊樹)

【YouTubeより】

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