日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

東電値上げ8.47%?まだまだ下げられるはず

報道によると、7月19日 藤村修官房長官と枝野幸男経済産業相、松原仁消費者担当相の3閣僚は東京電力の家庭向け電気料金の値上げ幅を8.47%とすることで合意したとされています。東電は10.28%の値上げを申請していましたが、人件費などの削減を拡大し、値上げ幅を圧縮するということになりました。人件費削減については、消費者庁の意見を反映し、管理職の年収減額を現在の25%から30%以上に拡大。福利厚生費も圧縮し、競争入札の拡大で資材などの調達費用の抑制を図るとする一方、一般社員の人件費は20%減の現行水準を維持する。東電福島第1原発1~4号機の安定化費用や賠償対応に伴う経費、第1原発5~6号機と第2原発1~4号機の減価償却費はいずれも計上を認めたとされています。

日消連では、今回の東電の値上げ問題については、公聴会、専門委員会での意見陳述に加え、7月4日には消団連ほかの団体との値上げ反対緊急集会を行いました。また、7月13日に行われた消費者庁での消費者団体、個人との意見交換会においても、総括原価方式の見直しと、総括原価方式による場合でも、減価償却費、賠償関連費用、電力購入費用の原価算入の見直しを行うよう、消費者担当大臣に訴えました。少なくとも稼働見込みのない福島原発の減価償却費と批判の多い1,008億円の電力購入費を原価査定に入れないだけで3%の値上げ幅の圧縮ができることを強調しました。(補足参照)

7月16日から本格化した枝野大臣と松原大臣の協議は、両者の見解の隔たりが大きかったことから難航したと報道されています。

枝野大臣氏が、平均10.28パーセントの東電の値上げ申請に対し、人件費を圧縮して8%台にすることを提案したのに対して、松原大臣は社員年収の削減幅を2割から3割に拡大し、福島第1原発5、6号機や福島第2原発の減価償却費を原価から外し、5~6%台まで値上げ幅を圧縮するよう強く要求していたということです。

これまで、資源エネルギー庁内の「専門家」のみの審議会で決められてきた公的料金に消費者庁や消費者の目線が入れられたことは評価に値します。今後同様の値上げ問題に対して、消費者庁や消費者委員会、消費者団体としての連携がますます必要となっていくと思います。

しかし、最終的に、東電への公的資本注入や社債償還に影響が出かねないとして、値上げ幅圧縮に難色を示した枝野大臣に押し切られた形になったことは残念です。枝野大臣が賠償に支障をきたすから、早目の値上げ合意を求め、東電への1兆円の公的資本の払い込みが数日ずれ込むことや、銀行団による3,700億円の追加融資を迅速に行わせるための経済界の要請を代弁したのではないかと推測されます。

日消連では、更なる値上げ幅の削減を求め、総括原価方式の見直し(電気事業法の改正)、情報の公開、公共料金算定への消費者(団体)の参画を求めていきます。

(共同代表 古賀真子)

(補足)

1. 減価消償却費

専門委員会では減価償却はすでに投下した資本について、繰延費用として計上すべきものであるから、原価にいれるべきとの結論でした。

しかし、減価償却費は企業利益の主要な源泉である固定資産のうち、使用または時間の経過によって価値の減少するものを減価償却資産として、費用収益対応の原則から、取得に要した金額(取得価額)は将来の収益に対する費用の一括前払いの性質があるとし、取得年度に一括償却するのでなく、各事業年度における減価償却費の減価額を費用として見たものです。この目的、機能から、事業の用に供していない資産は減価償却資産の範囲から除外されるとされています(法税例13条本文括弧内)。この、「事業の用に供しない」の典型例と考えられてきたのは,遊休資産のみならず、使用収益権限・処分権限を失っている場合についても、納税者に収益をもたらさないので費用の計上も認められないとされています。

これを、今回の値上げの原価として算入対象とすべきかを見た場合、今回減価償却費用として計上されている6,281億円のうち、福島第1の5、6号機と福島第2の減価償却費(414億円)は稼働予定のないものであり原価算定に入れるべきではありません。

再稼働問題が議論される中でも「福島では再稼働には自治体が同意することはない」と首長が明言しているなか、原価算入を是とすることは疑問です.これだけで、1%近い圧縮が可能です。

2. 賠償関連費用(5,141億円)

福島第1の1から4号機については特別損失としているのに、廃炉費のほかに安定化費用(487億円)や機能していない賠償対象費用に278億円を経費として原価に算入することは理解できません。賠償に誠実に応じていないのにその事務費用を原価算定に入れることは納得できません。

3. 購入電力費(7,943億円)

矛盾の最たるものです。東北電力と日本原子力電源から、稼働見込みのないのに毎年1,003億円を支払っていると報道されています。契約内容も情報公開されないままで委員会では原価算入が認められており、納得できません。この費用を原価に算定しなければ2%の値上げ幅の圧縮ができます。

以上の点から、少なくとも2.5%以上の圧縮は可能です。日消連では、関係省庁あて更なる削減を求めるよう東電に対して働きかけ、申請の見直しを行うことを要請します。