日本消費者連盟
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【編集委員ブログ】特許室(2018年4月23日)

 

1970年代、企業の技術者になった私の知人・友人の多くが特許室に配属させられました。これは左遷を意味していました。その部屋では、時間を持て余す日々が続いたといいます。ガラッと変わるのが1980年代です。米国政府が国家戦略に知的所有権を掲げたからです。日米間で紛争が激発します。例えば光ファイバー、オートフォーカス技術などの特許の分野、コンピュータ・ソフトなどの著作権の分野で、日本企業が相次いで訴えられる事件が起きました。

 

その後、知的所有権は、知的財産権(知財)と名前を変え、さらに知財を中心にした経済を知的経済と呼び、資本主義経済のかなめの位置に座るようになりました。その結果、特許室は知的財産室と名前が改められ、そこに配属されることは出世を意味するようになったのです。

 

その地位をさらに高めたのが、1995年のWTO(世界貿易機関)の設立です。前年に知的所有権にかかわる協定(Trips協定)が締結され、知的所有権の国際化が始まったからです。いまや、特許を押さえることは、世界的な支配権を確立することを意味するまでになりました。

 

モンサント社が種子の特許を支配して食料の支配者になりました。日本政府もイノベーションと称して予算を出し、バイオテクノロジー、ロボット、AI(人工知能)などハイテク分野で次々と特許権を取得し、世界の支配者にのし上がろうとしています。市民の生活を置き去りにして、破壊して。

 

(天笠啓祐)