【抗議声明】 種苗法改正案の国会提出に抗議するとともに、撤回を求めます
政府は3月3日、種苗法改正案を閣議決定し国会に提出、今国会中での可決・成立を目指しています。コロナ非常事態宣言の下にある時、政府はここでも火事場泥棒的に可決に向けて動いているといえます。
この法改正での焦点は、従来、登録品種の一部に限られていた無許可での自家増殖・自家採種禁止を登録品種すべてにまで拡大することにあります。違反した際の罰則も強化されます。これにより種子企業の利益は増えますが、農家の権利は制約され、食料主権が奪われます。ゲノム編集など遺伝子を操作した作物を開発する多国籍種子企業の権利を強化し、食の安全を脅かします。
種苗法は、1961年に制定されたUPOV条約(植物の新品種保護のための国際条約)の国内法です。政府の研究機関や大企業による新品種の開発が進むとともに、開発した品種を保護する動きの中から、この条約は誕生しました。植物特許と呼ばれ、知的財産権(知財)の一角を担ってきました。
モンサント社(現バイエル社)などが遺伝子組み換え作物開発を進め、バイオテクノロジーが種子開発の中心に位置するようになると、その保護を主要目的に1991年にUPOV条約が改正され、それを受けて1998年に種苗法が改正されました。その時の条約改正で、登録された品種の自家採種・自家増殖が原則禁止となりましたが、各国の裁量で禁止作物を指定できることから、政府は最初、ごく一部の作物の禁止にとどめました。その禁止作物は2016年にはまだ82種類でしたが、翌年から増え始め、2019年には387種類になり、ついに今回の改正ですべての登録品種への適用が図られようとしているのです。
現在進められている知財強化の流れは、安倍政権が進める国家戦略と密接につながっています。種子を支配するものが食料を支配するという現実が、モンサント社などの多国籍企業によって現実化してきました。種子を支配するには知財を支配することが必須だとしされてきたのです。それをもたらしているのが、新技術による新たな品種の開発にあります。その中心に位置づけられたのがゲノム編集技術です。
今回の種苗法改正は、ゲノム編集技術という新たな種子支配の技術が登場したのに合わせたタイミングで出されてきました。そして、いっそう重要になってきた知財保護の強化を目的に、無許可での自家増殖・自家採種禁止を登録品種すべてにまで拡大しようというのです。知財強化は、これまでも多国籍企業など企業による種子支配を強化し、農民の権利を奪い、食料主権を奪い、そして食の安全を奪ってきました。この改正はさらにその状況を増幅させることになります。種苗法改正法案の国会提出に抗議するとともに、その撤回を求めます。
2020年5月14日
日本消費者連盟