日本消費者連盟
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【要望書】石けんをPRTR指定にしないよう要望する(2020年10月6日)

 

10月6日、NPO川崎市民石けんプラントやNPOせっけんの街など複数の団体が、PRTR法で石鹸の主成分である「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム」を第1種指定化学物質に指定しないように求める要望書を、環境省、厚生労働省、経済産業省に提出しました。日本消費者連盟も呼びかけに応えて賛同団体として名を連ねました。

 

 

 

PRTR法に於ける「第一種指定化学物質候補物質」への「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩」を指定しないよう求める要望書

 

 

化学物質排出把握管理促進法(以下PRTR法)における第一種物質は10年置きに見直され、本年2月25日に現在462物質から527物質に増やす見直し案が発表されました。その中に「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩」が含まれました。

脂肪酸ナトリウム塩と脂肪酸カリウム塩は、主に洗濯などの石けんの主成分として実用化されています。石けんと人との付き合いは5000年前にさかのぼり、人体や自然界に対する安全性への信頼があるからこそ長い間使い続けられています。今回の指定に向けては、実験室での「生態毒性」試験において水生生物に影響が出ているとし、生態毒性が「クラス2とクラス1」であることを挙げていますが、実際の河川や海と実験室とでは環境が異なり、実験結果の信ぴょう性についてはパブリックコメントや研究者から指摘があった通りです。

PRTR法の主旨では、第一種物質に指定されるのは、一定以上の生態毒性があり、さらに難分解性と高蓄積性のある物質とされています。しかし、「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩」については、環境水に排出されたとしても、河川や海の中のミネラル分(カルシウム・マグネシウム)と結合し不溶性の食用石けんとなって小生物の餌となり、生態毒性は極めて低いものです。また、分解性が高く環境に負荷をかけないことは明らかです。PRTR法の第一種物質に指定されるに相当の根拠を見出すことはできません。

厚生労働省が発表した新型コロナウイルス感染予防として、石けんを使った丁寧な手洗いが推奨されているところであり、今回の見直しは市民の間に混乱が起きかねません。

自然と共に長きにわたり共存してきた石けん成分を「第一種指定化学物質候補物質」に指定しないでください。私たちは、より安全な石けんを選択して使用し、命の源である水を汚さず生態系を守り、次の世代に伝えていきたいと考えます。

 

要望項目

「第一種指定化学物質候補物質」への「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩」を指定しないよう要望します。

 

20201006化管法石けん要望書

 

★【結果報告】石けん成分はPRTR指定にならず(「消費者リポート」2021年11月号より)

環境省は2021年10月15日、石けん成分(飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩、飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩)を化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)の指定物質とする案を取り下げて指定しないことを発表しました。石けんが、すでに指定されている合成洗剤成分と同じ”有害物質”であるかのように指定しようとする動きがありましたが、それを許しませんでした。日消連もパブコメを呼びかけ、多くの消費者が石けんを指定物質にするのはおかしいと声を上げたことで、国がまっとうな判断を下したものです。運動の成果を喜びたいと思います。