日本消費者連盟は6月16日の第45回定期総会で、「香害をもたらす製品の規制と使用自粛の啓発を求める特別決議」、「築地市場の豊洲移転中止と築地市場の再整備を求める特別決議」、「平和に生きる権利を守り、たたかうための特別決議」の3本の決議を採択しました。
香害をもたらす製品の規制と使用自粛の啓発を求める特別決議
柔軟剤、制汗剤などの強い香りをともなう製品による健康障害、いわゆる「香害」で苦しむ人が増えています。これは香りの好き嫌いの問題とは異なり、香料や香料にともなう製品の有害な化学物質に曝露することにより、頭痛、めまい、吐き気など全身の不調を引き起こす深刻な大気汚染、公害です。メーカーや行政には早急な対応が求められます。
日本消費者連盟は、2017年7、8月に香りの害に苦しむ人を対象に、電話相談窓口「香害110番」を設置し、メール、ファックスを含めて2日間で213件の相談を受けました。そこには苦しい症状を周囲に理解されず孤立する人々の姿がありました。そこで日消連は、化学物質過敏症の患者団体、環境団体にも呼びかけ、現在は7団体で行政や企業に訴える活動を続けています。
これまで消費者庁に相談窓口の設置を、厚生労働省に原因物質の究明と規制を、文部科学省に学校など公共施設での自粛啓発を、経済産業省に洗剤業界への指導をと要望を出してきました。いずれも「症状の原因となる物質を特定できない」ということを理由に、対策に後ろ向きの姿勢を変えていません。原因物質の特定は行政の責任で追求すべきですが、仮に特定できなくても、被害者が100万人とも言われる問題を放置する姿勢は許されません。予防原則に立って、原因であることが疑われる商品は製造・販売を中止することを求めます。
また公共施設とりわけ子どもたちが過ごす学校、保育園などでの香り製品の使用自粛の啓発を求めます。5月22日に実施した院内集会「香害110番から見えてきたもの」で7団体が要望したように、4省庁による合同連絡会議を設け、問題解決に向け早急に動き出すよう要望します。
そして、私たち消費者は、香害のもととなる柔軟剤、消臭剤、制汗剤などを買わない、使わない不買運動を広く呼びかけ推進していきます。
以上、決議します。
2018年6月16日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第45回定期総会参加者一同
築地市場の豊洲移転中止と築地市場の再整備を求める特別決議
東京都の小池百合子知事は2017年12月、築地市場を2018年10月11日に豊洲市場に移転すると発表しました。食の安全・安心を求める私たち日本消費者連盟は、この決定を受け入れることはできません。
移転先とされている豊洲市場の最大の問題は、土地が汚染されていることです。東京都の調査では、豊洲市場予定地の地下水から環境基準を大幅に超えるベンゼンが検出され続けています。ベンゼンは発がん性物質です。また、猛毒のヒ素も環境基準を超えて検出されていますし、「不検出」が環境基準のシアンも検出されています。汚染対策だったはずの「盛り土」がされていなかったため、東京都はその地下空間をコンクリートで覆う工事を行っていますが、コンクリートは時間の経過とともにひび割れが生じます。そこから有害な物質が侵入することは容易に想定できます。
また、豊洲市場への移転は、築地市場で働く人たちの権利も奪うことになります。築地市場の水産仲卸業者でつくる「築地女将さん会」が2018年3月から4月にかけて東京魚市場卸協同組合の全業者を対象に行なったアンケート調査(5割弱が回答)によると、移転計画について「今からでも中止にすべき」という回答が31.4%、「もう一度凍結して話し合う」が38.7 %だったのに対し、「このまま進めて良い」は4.6%でした。築地市場で働く人たちの約7割が豊洲市場への移転に納得しておらず、築地市場で営業する権利を東京都が奪うことはできないはずです。
2017年12月に国際記念物遺跡会議(イコモス)の国内組織「日本イコモス国内委員会」が築地市場を含む周辺施設を「日本の20世紀遺産20選」に選定しました。イコモスは、世界遺産の登録について審議する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関です。東京都は豊洲への移転によって築地市場を解体すると発表していますが、築地市場の文化的価値を守るためにも、解体ではなく再整備をすべきです。
食の安全・安心を守るため、築地市場で働く人たちの権利を守るため、豊洲移転の一刻も早い中止と、築地市場の再整備を求めます。
以上、決議します。
2018年6月16日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第45回定期総会参加者一同
平和に生きる権利を守り、たたかうための特別決議
日本の憲法の三大原則は国民主権、基本的人権、平和主義であるとされています。生命を脅威にさらされることなく、平和に、穏やかに生きていく権利がしっかりとこの手にあることを、当たり前のこととして私たちは日々くらしています。
いま、この当たり前のことが壊されようとしています。安倍政権や自民党は、憲法が定める国民主権、基本的人権に制限を加え、集団的自衛権の名のもとに海外派兵が可能となった自衛隊を憲法に明確に位置付ける憲法改定を進めようとしており、そのための土俵づくりとなる国民投票法の改定を行おうとしています。
そうした動きに反発する市民の運動を押さえるために、市民がもつ「自由」を取り締まる共謀罪も制定から1年を迎え、動き出しています。さらには、武器輸入と武器輸出の拡大、大学における軍事研究の広がりなど、社会全体の軍事化が目に見えて進んでいます。
加えて、私たちのくらしや自然環境まで丸ごと市場にゆだね、国際競争の場に投げ込むグローバリズムが一層拡がり深まっています。それは日本を含むアジア太平洋地域ではTPP、RCEP、日米FTA、さらにはEUとの自由貿易協定といった具体的な形となって迫っています。その結果、本来「公(おおやけ)」のものであるはずの福祉や教育、医療、保育等々を私企業にゆだねる「改革」が進んでいます。土、水、森林、海、浜、さらには種といった、本来「みんなのもの」である公共財が、人々の手からはぎ取られ、資本の金儲けの手段にされようとしています。
私たち日本消費者連盟は、こうした動きに対峙し、思いを同じくする市民の運動に積極的に連なることを表明します。
以上、決議します。
2018年6月16日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第45回定期総会参加者一同