日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
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【意見書】食品添加物の安全性評価と表示ルールに関する意見書(2019年5月23日)

 

2019年4月から消費者庁で食品添加物表示制度に関する検討会が始まりました。
食品添加物表示は「物質名表示」が原則ですが、例外として「一括名」「簡略名」「類別名表示」などが認められているため、表示を見ただけでは、実際にどんな添加物が使われているか、私たち消費者にはわかりません。できるだけ食品添加物を避けたいと思っている消費者は多いのに、現在の表示では避けることができないのです。
そこで、日本消費者連盟の食の安全部会は現行の表示制度の問題点と併せて私たちが求める表示制度についての意見書を提出しました。

 

2019日消連第1号
2019年5月23日

消費者庁長官 岡村和美様
食品添加物表示制度に関する検討会座長 西島基弘様

特定非営利活動法人日本消費者連盟
共同代表 天笠啓祐
共同代表 大野和興

食品添加物の安全性評価と表示ルールに関する意見書

 私たちは1969年の創立以来、「すこやかないのちを未来につなぐ」を理念に活動している消費者団体です。このたび消費者庁で食品添加物表示制度に関する検討会が始まったことを受け、私たち消費者が求める食品添加物表示制度について意見を述べます。

1、食品添加物とは
 食品添加物の定義:食品を加工する際、保存性を高める(酸化防止など)、色・味・香りをつける、とろみをつける等を目的として添加されるもの。
高度経済成長期(1950年代、60年代)に食品添加物の使用が急激に増え、60年代後半には食品公害といわれることになる事件が多発した。消費者が食品添加物を不安に思う気持ちを受けて1972年、国会で付帯決議「食品添加物の使用は極力制限する方向で措置する」が採択された。しかし、その後食料の輸入自由化が始まり、1983年には規制緩和措置が取られるようになった。安全性を確保するため、国はすべての食品添加物の動物実験など安全性評価を行うべきであるが、日本では次のようにすべてのものが評価されているわけではなく、諸外国に比べてその評価の方法は十分とは言えない。
食品添加物は厚生労働省が指定したものでなければならないのが原則である。動物実験などで、発がん性、慢性毒性、遺伝毒性などが審査され、人体に有害とならないように1日摂取許容量(ADI)が決められる。しかし例外も多いのが実態である。
「既存添加物」;以前から日本で広く使用され、長い食経験があるものとして暫定的に使用が認められてきた。365品目ある。ただし、化学合成の香料は「類」として掲載されており、物質名としてはさらに増えることになる。国際的にも安全性評価が求められることになり、徐々に安全性評価が行われている。しかし、動物実験をはじめ厳密な実験が必要であるが、試験を行う際の試料は市場で販売されているものを使うなど、本来高濃度のものを試料とすべきであるのにそれが行われていない。したがって、慢性毒性、アレルギーをはじめ発がん性、遺伝毒性の試験には不十分である。しかし、諸外国(米国、EU、香港など)へ輸出する場合、特に米国へは食品医薬品局(FDA)の承認をとる必要があり、日本政府は事業者に添加物を使用する際、試験結果などの資料を提出させることとなった。その費用を国が助成する制度もあるが、それでもFDAの評価を得られるものは少ないのが実情である。
「一般飲食添加物」;酒精(アルコール)、イチゴ果汁、寒天など一般の食品を添加物とするもの。約100品目ある。
「天然香料」;動植物から得られる天然物質で、食品に香りをつけるために使用されるもの。約600品目ある。
「指定添加物」;リスク評価を行い指定されるもの。454品目ある。食品安全委員会の安全性評価の仕方は、欧米の過去の実験結果を検討するだけ。新たに動物実験を行うことなく、1日摂取許容量を決める。近年、国際汎用食品添加物を拙速に承認することも多く問題である。

2、添加物表示の現状
 食品添加物を食品に使用した場合、事業者は原則としてすべて表示する義務がある。表示する際のルールは、物質名、用途名と用途名併記、一括名、表示免除である。しかし、その結果、アレルギー患者にとって、アレルゲンであるかどうかの確認に必要な物質名が確認できなかったり、消費者一般にとっても、どのような食品添加物が使われているのかが不明確になり、食品の選択ができない事態が増えている。
・物質名表示が原則だが、品名、別名、簡略名、類別名でもよいとされている。例えば、「食用赤色102号」は「赤色102号」「赤102」などと簡略名でよしとされる。
・一括名表示も認められている。イーストフード、ガムベース、かんすい、酵素、光沢剤、香料、酸味料、調味料、豆腐用凝固剤、苦味料、乳化剤、pH調整剤、膨張剤、乳化剤、増粘多糖類などの表示でよしとされている。「イーストフード」はイーストに吸収させパンの膨張剤として効率を上げるため用いられるが、カルシウムの吸収を妨げるリン酸、毒性の強い塩化アンモニウムなどが含まれている場合もある。「ガムベース」には合成の酢酸ビニル樹脂、コーパル樹脂をはじめ多くの原材料があるが、発がん性・肝機能への悪影響が懸念される物質もある。「かんすい」は炭酸ナトリウムなどの化学物質であり、大量に摂ると胃や腸の粘膜に傷がつく。リン酸を含むものもあり、たんぱく質の吸収が悪くなる。「増粘多糖類」はアイスクリーム、乳製品、ソースなど多くの食品に使われるが、カラギナン、グアーガムなど安全性が証明されていないものもある。
・キャリーオーバーは表示義務なし。例えば、せんべいを作る際に使用される醤油は食品の原材料であり、保存料の安息香酸や着色料のカラメル色素が含まれている場合があるが、最終製品にはほとんど残らないか、残ったとしてもその効果を発揮しないため、せんべいの原材料として安息香酸やカラメル色素は表示が免除されている。
・加工助剤は表示義務なし。例えば、プロセスチーズの製造過程で炭酸水素ナトリウム(重曹)を用いたとしても、加熱溶解の過程で大部分が分解してしまう。このように最終製品への残留がごくわずかである場合にその表示を省略できる。

3、表示のあるべき姿
(1)食品添加物はすべて物質名で表示するとの原則を守り、一括名表示を認めないこと。
(2)消費者委員会で目下、食品表示の量が多すぎるとして、省略しようとする動きがあるが、食品添加物はすべてパッケージに記載すべきである。これはできる限り食品添加物の量を減らせば可能となる。
(3)米国で始まった、パッケージ表示に替えて二次元バーコードを利用する方法は、消費者が食品購入の際に活用できないことから認めるべきではない。
(4)既存添加物の安全性確認を速やかに実施すること。
(5)食品添加物の相乗作用・複合毒性に関する研究を早急に行うこと。
(6)輸入された加工食品に含まれている食品添加物は表示されないことが多いが、国内で認められていないものが使われていることが懸念される。これらもすべて事業者に情報を開示させること。

以上