日本消費者連盟
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【声明】福島第一原発事故による汚染水を海洋に放出するな トリチウム汚染水はこんなに危険だ(2023年8月10日)

 

【緊急声明】
福島第一原発事故による汚染水を海洋に放出するな
トリチウム汚染水はこんなに危険だ

 

政府は福島第一原発事故後、貯まり続けてきたトリチウム汚染水の放出を行おうとしています。この放出は2021年4月13日に決定され、その後、IAEA(国際原子力機関)などとともに「安全」を強調し、韓国など周辺国に働きかけ、今月中にも実行に移そうとしています。そこでは実害は起きない、あるのは風評被害だとし、また諸外国でも海洋放出が行われているとして、批判を一切受け付けようとしません。
私たちは改めて、トリチウム汚染水そのものの危険性を訴え、海洋放出の方針に抗議するとともに、その撤回を求めます。
トリチウム汚染水放出の最大の問題は、トリチウムが水素と化学的性質が同じ点にあり、そのためトリチウム水は、水と同じ性質のため化学的に処理できず、また生体内に入ってきた際にも水と同じ役割を果たすことです。
生体は水素、炭素、酸素などで構成されており、トリチウムはその水素と置き換わることが分かっています。この置き換わったトリチウムを「有機結合型トリチウム(OBT)」といいますが、細胞内にとどまり続け、容易に排出されず、そこで放射線を出し続け、その影響は極めて大きくなります。
さらに大きな問題は、この結合がDNAなど染色体を構成するもので起きやすいことです。トリチウムはやがて放射線を出してヘリウムに変わります。そうすると水素がトリチウムと置き換わっていた部分で切断が起き、DNA破壊などが起きます。
福島第一原発に溜まっている汚染水には、周囲の環境から大量のプランクトンや微生物が入り込み、繁殖しています。トリチウムと生物が長い時間共存している環境は初めての経験です。生物内に取り込まれたトリチウムで相次いでOBTが起き、その生物が大量に生態系に放出され、魚介類や藻などに取り込まれ濃縮され、さらに私たちの食卓に登場する危険性があり、そして私たちの健康を破壊する事態が起き得ます。
トリチウム水は水と化学的性質は同じでも物理的性質は異なり、沸点や融点が異なります。その性質の違いを利用した除去の方法も開発されています。それを実行しないのは、コストがかかるからです。とても許せるものではありません。
以上のように、トリチウム汚染水の海洋放出は、私たちの生命や環境を著しく破壊するものです。早急に方針を撤回するよう強く求めます。

2023年8月10日
特定非営利活動法人 日本消費者連盟