日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

【特別決議】共謀罪廃止など4本の決議を総会で採択(2017年6月17日)

日本消費者連盟は6月17日の第44回定期総会で、「共謀罪廃止に向け粘り強く運動を進めます」、「地産地消の自然エネルギーを推進し、脱原発の社会を求める決議」、「消費者の知る権利を保障した遺伝子組み換え食品表示制度を求める決議」、「築地市場の豊洲移転即時中止と築地市場の再整備を求める決議」の4本の特別決議を採択しました。

 

特別決議
共謀罪廃止に向け粘り強く運動を進めます

2017年6月15日早朝、共謀罪法案が参院本会議で強行採決され、可決・成立しました。法務委員会の審議を中断、委員会採決を経ないでの暴挙でした。国会は死に、わたしたちの自由と民主主義は瀕死の状態に陥ってしまったことをまず指摘しなければなりません。

国会審議を通して、共謀罪の怖さは誰の目にも明らかになってきました。捜査当局の意のままに、普通の人がいつ共謀罪で捜査されたり逮捕されるかしれない、という懸念が現実のものとなりました。捜査当局による市民監視――メールののぞき見や盗聴、一方的に目星をつけた人物の尾行など――が日常的に行われることになります。人権や環境団体などの市民団体も共謀罪捜査の対象になることも明らかになりました。

日本消費者連盟は“すこやかないのちを未来へ”を掲げ、憲法が定める平和的生存権を根っこにおいて、50年の活動を積み上げてきました。“いのち”を阻害するものには、それが権力であろうが巨大な資本であろうが、粘り強く、強靭に、しなやかに対峙し、たたかってきました。消費者・生活者のいのちを守る活動の一環として、たとえば環境や人の健康を害する洗剤を規制するための政府や洗剤メーカーへの働きかけ、遺伝子組み換え作物・食品を進める企業への異議申し立て、人や動物の神経系を脅かすネオニコチノイド系農薬の規制を求める運動や農薬会社への働きかけといった活動を日常的に行っています。原発反対、憲法の定める平和と基本的人権を守らせる運動も行っています。

こうした活動が行政や企業活動に対する妨害とか企業の知的財産権の侵害ということで共謀罪の対象になりかねません。共謀罪は大きな壁となって、私たちの活動の前に立ちふさがるでしょう。これまでに増して、粘り強い、強靭でしなやかなたたかいが要求されるはずです。

日本消費者連盟は、失われた自由と民主主義の確立を掲げ、わたしたちの運動の基盤であり担い手である消費者・生活者の声を結集して、さまざまの分野の市民運動、労働運動、協同組合運動、農民運動と手を携え、共謀罪法の廃止に向け粘り強く運動を進めます。

2017年6月17日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第44回定期総会参加者一同

 

特別決議
地産地消の自然エネルギーを推進し、脱原発の社会を求める決議

私たちは、2017年6月6日、日本原子力研究開発機構大洗開発センターで、5人の作業員がウランとプルトニウムが入った保管容器を点検していたところ、放射性物質が漏れ4人の作業員の肺から放射性物質が検出されたとの報道に息を飲み、怒りが込み上げてきます。保管容器は1991年に蓋を閉じた後は、一度も点検されてきませんでした。

原子力機構によれば、最も多く被ばくした50代の男性職員の肺からは、暫定値で2万2000ベクレルのプルトニウムが検出されたと報道されました。この数値は、全身の被曝量で年1.2シーベルトの内部被曝に相当します。全身被曝が100ミリシーベルトを超えると、がんのリスクが明らかに高くなることは、広島・長崎に投下された原爆による痛ましい被害に基づいて、すでに立証されています。

原子力発電は、どんなに安全に留意して運転されようとも、死の灰(高レベル放射性廃棄物)とプルトニウムを生み出します。日本では、使用済み核燃料を再処理して取り出されたプルトニウムが既に48トン貯まっています。また、死の灰の完璧な処分方法はあり得ませんが、原発を稼働させている限り、増え続けます。

原発の再稼働を、決して許してはなりません。しかし、政府が2014年に決定した「エネルギー基本計画」では、原発をベースロード電源と位置付け、その再稼働を推進し、現在、経済産業省は、今後の見直しに関しても、原子力発電所の新増設や建て替えの必要性を明記するとの方針を打ち出しています。

加えて、原発再稼働の条件整備のつもりか、この夏にも高レベル放射性廃棄物の処分場の適地を地図で示し、原子力発電環境整備機構(NUMO)が適地で対話活動を進め、「理解と協力」が得られれば、政府が立地調査の実施を自治体に申し入れるという構えです。

死の灰を、これ以上増やしてはなりません。

私たちは、政府のエネルギー政策を転換させ、原発を一刻も早く止めて、資本に依拠しない地産地消の自然エネルギーを推進していく道筋を踏み固めていきます。

この道筋は、私たち一人ひとりの人権といのちの拠り所である環境が大切にされる社会に連なっていくと、私たちは確信しています。

戦争も核兵器も原子力発電もいりません。

以上、決議します。

2017年6月17日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第44回定期総会参加者一同

 

特別決議
消費者の知る権利を保障した遺伝子組み換え食品表示制度を求める決議

消費者が待望して消費者庁が設立されたのは、2009年でした。それに伴い、食品表示が消費者庁に一元管理化されることになり、2015年に食品表示法が施行されました。本来、食品表示は消費者の知る権利、選ぶ権利を守るために存在するはずです。しかし、作られた法律を見て多くの消費者が失望しました。消費者が最も強く望んだ、加工食品での全原材料の原料原産地表示、遺伝子組み換え全食品の厳密な表示、食品添加物の物質名表示が、まったく考慮されなかったからです。

しかし、その後も私たちは粘り強く表示制度の改正を求めました。その結果、まず加工食品の原料原産地表示の見直しが行われました。しかし、提出された表示案は、加工食品の中で最も重い原材料のみの表示であり、しかも例外規定が多く、消費者が望む全原材料の原産地表示からは程遠い内容でした。それでもこの表示案への食品業界の反対は強く、強い反対の意思を示し、この表示案をつぶすために動いたのです。

消費者庁は4月18日、加工食品の原料原産地表示に続いて、遺伝子組み換え食品表示の見直しに入り、4月26日に第1回検討会を開催しました。6月20日の第2回以降、消費者団体や業界団体からのヒヤリングが行われ、2018年3月末には検討会によるとりまとめが発表される予定です。遺伝子組み換え表示制度もまた、業界団体の抵抗は大きく、どのような改正案が提出されるか、予断を許さない状況です。

日本消費者連盟は昨年、他団体と協力して「すべての遺伝子組み換え食品に表示を求める」署名活動を展開し、約20万筆を消費者庁に提出しました。消費者の間で「遺伝子組み換え食品を食べたくない」の声は高まっています。食品表示は、消費者の知る権利、選ぶ権利を守るためにあるはずのものです。

私たちは、これら消費者の権利を強く主張し、遺伝子組み換え全食品での厳密な表示を求めます。

2017年6月17日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第44回定期総会参加者一同

 

特別決議
築地市場の豊洲移転即時中止と築地市場の再整備を求める決議

東京都の築地卸売市場の豊洲移転問題は、昨年8月の移転延期決定以降、棚上げされた状態が続いています。小池百合子東京都知事は6月7日に閉会した東京都議会の開会初日の所信表明演説で豊洲市場予定地の土壌汚染は当初約束の「無害化」ができていないことを認め、謝罪しました。これはきわめて重要な発言です。

2011年2月の都議会予算特別委員会で豊洲は無害化された安全な状態で開場することが決まり、東京都より「無害化3条件」として、①技術会議により有効性が確認された土壌汚染対策を確実に行うこと、②東京ガス操業由来の土壌の汚染物質がすべて除去、浄化されること、③地下水中の汚染も環境基準以下になること、が示されました。ところが、汚染対策のための「盛り土」はなされていませんでしたし、地下水調査では環境基準の100倍のベンゼンなど有害物質が検出され、約束した条件を満たしていませんでした。都知事の謝罪によって豊洲への移転計画が破綻したことは明らかです。

豊洲の市場予定地は、すでに800億円以上を費やしながら、いまだ土壌や地下水の汚染状況が解消されていません。仮に豊洲に移転するようなことになれば、今後どれだけの汚染対策費用が必要になるかわかりません。豊洲開場の条件である「無害化」ができていなかったと表明した以上、小池都知事は豊洲移転の即時中止を決断し発表すべきです。

6月13日に東京都の市場問題プロジェクトチームが公表した報告書は、仲卸業者の「目利き」に支えられた築地ブランドの重要性に言及し、現在の築地市場を営業しながら改修する「築地再整備」案の優位性を打ち出すものでした。仲卸業者を含む築地市場関係者が80年以上かけて築き上げてきたプロの技のおかげで、私たちは安心して魚を食することができます。築地ブランドを守ることは、日本の食を守ることです。

食の安全・安心を守るため、築地市場の豊洲移転の即時中止と、築地市場の再整備を求めます。

2017年6月17日
特定非営利活動法人日本消費者連盟 第44回定期総会参加者一同