日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
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2017年6月号「暮らしを脅かす巨大な太陽光発電 」


埼玉県西部の山間部である秩父市や横瀬町に、太陽光パネルが次々と設置されています。住民が景観悪化や土砂崩れを心配していると知り、地元に住む日消連の大野和興共同代表とともに、5月13日、現地の人のお話を聞きました。

脆弱な設置、台風が来たら?
「武甲山がこれ以上削られるのも嫌だけど、太陽光パネルはもっと許せない」。行きのタクシーで運転手は、思わぬほど嫌悪感を顕わにしました。セメントが取れる武甲山は長年削られ続け、原型を想像するのも難しくなりました。それに輪をかけるように太陽光パネルは、緑豊かだった山の風景を一変させています。
西武秩父駅から車で15分。秩父市大宮の山の斜面に大量の太陽光パネルが張り付いていました(3ページ写真)。ここは2015年まで鬱蒼とした林でしたが、16年工事が始まり今も造成が続いています。地元の会社がパネル設置も発電事業も行っており、「SEI
KO」とパネルで大きく会社名が掲げられています。
パネルを支えるのは細いパイプ。土台はなく直接斜面に打ち込まれています。大きなパネルを急斜面で支えるには、あまりにも脆弱のように見えました。「台風が来たらパネルが飛ばされるのでは?」「森林伐採で地盤を支える根っこがなくなった所へ、豪雨が来たら一気に土砂崩れになるのでは」と見学者は口ぐちに懸念を出し合いました。
斜面の下には住宅や小学校、斜面の上には支援学校があります。通学の子どもたちや住民は、パネルの間を縫うように走る急斜面の道を行き来します。緑豊かな風景が、太陽光パネルに塗り替わり、秩父市の町から眺めた景色も一変しています。観光都市を標榜する秩父市としては、景観上も問題があるのでは、という意見も出されました。

急がれる条例制定
ともに見学に加わった秩父市議会議員の金崎昌之さん、清野和彦さんからも話を聞きました。住民からの心配が寄せられ、金崎さんは昨年の6月議会で太陽光パネル設置について質問しました。市にも近隣住民から懸念が寄せられているが、今のところ規制する制度がなく、「気にはなっているが、手の打ちようがない」というのが答弁でした。
太陽光パネルは建築基準法上の建築物、工作物からは除外され、土砂条例も外部からの土砂の搬入がなければ対象外です。それでも金崎さんの質問がきっかけとなって、昨年11月、秩父市は「太陽光発電事業の適正実施に関するガイドライン・要綱」を決めました。
しかしこれは条例ではないため拘束力はありません。条例化をという声もあり、山の急斜面は避ける、居住地域との緩衝地帯を設けるなどの条件を検討しているそうです。秩父市は環境基本条例を持ち、「ちちぶ環境基本計画」を定めています。その面からも、この問題を考えてみたいと清野さんは話していました。