土砂が棚田に流れ込む
もう1カ所、見学に行ったのは、秩父市の東隣に位置する横瀬町です。この場所は、不在地主が山を所有し、設備管理は日本メガソーラー整備事業という東京の会社が担っています。すぐ下の住民の人に聞くと、16年春に森林を伐採し、その木を埋めて地盤を作ったとのこと。小さな沢の流れもせき止めたことで、地盤から水がしみ出しているところもあり、工事のさが明るみになりました。
パネル設置の下の石垣には、油が流れたような跡があり、地元の人によると「パネル地盤の砂利を固める土壌固定剤が滲み出しているのでは」とのことでした。この土地の下には美しい棚田がありますが、昨年の大水では斜面から土砂が棚田に流れ込む被害があったそうです。パネル下の地盤にどのような化学物質が使われているのか。油の流れたような跡を見ると不安が募ります。
もう1つびっくりしたのは、パネル設置場所に隣接した山の裾野で、土砂崩れが起きていたことです。山を削ったことで地下水の流れが変化し、隣接の斜面の地盤に影響を与えたのではないかと地元の人は見ています。現場は、地震が起きたかのような地盤の崩れ、コンクリートの石垣が割れて落ちていて、相当の圧力が加わったことを物語っていました(上写真)。
パネルを設置した斜面でも土砂崩れが起きれば、太陽光パネルもろとも下の集落を直撃します。付近の住民はみな心配しているとのことでした。
巨大化したものには問題が
見学終了後に参加者で話し合いました。「脱原発のためなら太陽光パネルは必要と思っていたけど、巨大化したものには問題があることがわかった」「自然エネルギーは、ゆっくりと仕組みを作らないと。急ぐあまりに自然破壊していたのでは元も子もない」。
都会暮らしでは目にすることのない巨大な太陽光パネル。住民の人にも直接話を聞くことで、頭で考えているだけではわからない問題点が見えてきました。
ガイドラインや条例、策定の動き
2015年9月の豪雨に見舞われた鬼怒川水害は、太陽光パネル設置業者が自然堤防を掘削したことが原因と言われています。いま巨大太陽光パネルの設置が進む各地の自治体で、ガイドラインや条例を策定する動きが進んでいます。
ガイドライン策定は、茨城県つくば市、愛知県田原市など昨年から活発化し、兵庫県ではこの7月に設置届を義務付ける条例を施行します。いずれも自然破壊を食い止め、景観を保全することを主目的に、事業者の住民への説明を求めています。
鹿児島県で初のガイドラインを策定したのは霧島市です。市議会議員の中村満雄さんは、他の地域でも増えている外資系企業が、設置の権利を獲得し売買することを懸念しています。「管理責任が曖昧になり、耐用年数を経た20年後には、ごみの山が放置される危険性もある」。太陽光パネルを単なる儲けの対象とする企業の動きに警戒しています。