日本消費者連盟
すこやかないのちを未来へ
企業や国家の利益よりも人のいのちや健康を優先する世の中に変えたいと活動しています。

2017年6月号「暮らしを脅かす巨大な太陽光発電 」

太陽光パネル見学者による座談会
「では、どうしたらいい?」

埼玉県秩父地域の太陽光パネルを見学に行った会員たちが、座談会を開きました。現地でこの問題に取り組んでいる大野和興さんに、改めて住民の思いを聞きながら、「では、どうしたらいいか」を考えました。

 

じゃあ原発でいいんですか?

——見学してみていかがでしたか。
フリッド 太陽光パネルがあんなにも簡単な設置でびっくりしました。日本は台風が多いところだから、もっと丈夫に作らないと危ないと思います。
廣内 太陽光エネルギーが悪いとは思いませんが、日本のように国土が狭くて山の多い所に、大きな太陽光パネルは合わないと思います。やっぱりその土地ごとの特性に合わせたやり方でないと、自然エネルギーはうまくいかない。それとCO2削減のために、森林を切って太陽光発電するというのは矛盾しています。CO2を吸収してくれる森林を切ってしまっては元も子もありません。
大野 地元住民は、当初どんなものができるか知らされていませんでした。工事が始まってみて、大規模に自然破壊されることを知ったのです。横瀬町の棚田の上に作られた場所は、しいたけ栽培の原木をとったり、子どもたちがカブトムシを取りに来ていた里山で、そこが傍若無人に切られていきました。業者は全く悪いことをしているつもりがない。こちらが意見を言うと、「じゃあ原発でいいんですか?」と。

太陽光にもグリホサート
——住民の皆さんの反対理由で大きいものはどんなことですか。
大野 山を崩した傾斜地の場合は、最も怖いのが土砂崩れですね。横瀬町の場合はすぐ横で土砂崩れが起きている。いつパネルもろとも流れてくるかわかりません。通学路では、パネルが吹き飛ばされて子どもたちに当たらないかと心配です。隣の農地に建設計画のあった家では、パネルの反射で熱射病になるのではと危惧していました。ここは秩父で唯一、住民運動で計画を中止させた所です。こうした懸念材料に加え、多くは緑豊かな故郷がパネルだらけの景観になることを受け入れがたいと思っているのです。
廣内 自然環境を壊して大量のごみを生むのであれば、再生可能エネルギーとは言いがたいですよね。エネルギーを生み出す中での循環が見えない。いったん崩
れた山をもとに戻すのは大変だと思います。
フリッド 太陽光パネルの展示会では、必ずグリホサートなどの除草剤がセットになって紹介されていると聞きした。遺伝子組み換え作物の種子に、もれなく付いてくるグリホサートが、太陽光パネルにも付いてくる。パネルに草がかぶさると発電能力が落ちるというので、除草剤が撒かれているのです。これも住民の健康には大きな問題です。

金融商品化する太陽光発電
——これだけ巨大な太陽光パネルが増えた理由は何でしょうか。

大野 国が2012年に、再生可能エネルギーの買い取りを電力会社に義務付けた固定価格買取制度(FIT)を導入し、太陽光発電が金融商品のように扱われたことが大きいと思います。太陽光の場合、出力10キロワット以上の設備の電気は、20年間高値固定で買い取られるから、な計画でも権利だけは獲
得しようと、いろいろな企業が手を挙げました。今年から設備認定も厳しくなりましたが、当初は申請書類を提出すれば認定されるという手軽さでした。農地を守るのが役目の農業委員会も遊休農地活用ということで農地転用を安易に認めている。これがいつまで続くのか。国土の荒廃が進むのではないでしょうか。
廣内 やはり何らかの行政の歯止めが必要かもしれませんね。私たちも近隣のメガソーラー建設計画で「あれ? これ大丈夫かな?」と思ったら、どんなことに気を付けてチェックすればいいのか、わかると心強いです。自治体に問い合わせてみる、ガイドラインや条例があるか、説明会が開かれるか、なども調べてみたらいいですね。