私たちが毎日消費している電気。でも、原発で発電された電気は使いたくないですよね。「できれば放射能も温暖化ガスも出さない再生エネルギーでつくった電気を使いたい」という消費者は大多数を占めています。
けれども、家庭部門など小口の電力需要家については、いまだに電力会社の地域独占が認められているため、私たち消費者は自由に電気を選べない状態が続いています。しかも、現行の「総括原価方式」による電気料金体系の下では、電力会社は原発の建設費用や、原子力の宣伝に使っている支出を「電力供給に必要な費用」として計上し、その額の一定比率を「適正利潤」として電気料金に上乗せしています。電力会社は利益の大部分を、電力会社からしか電気を買うことのできない私たちから得ているのです(東京電力の場合、利益の9割が家庭用電力)。
消費者が電気を選べるようにするためには、現在の電力会社による地域独占体制を解体して家庭用電力まで全面的に自由化するとともに、発電と送配電を分離して様ざまな発電事業者が自由に電力市場に参入できるよう、電力システム全体を改革することが不可欠です。
経産省の「電力システム改革専門委員会」は、2013年2月にこうした電力改革を進めるための報告「経産省電力システム改革専門委員会報告」をまとめました。その内容は、実施のスピードの点で不満が残りますが、方向としては私たちの望んでいる改革に近いものです。
この報告を踏まえて「電気事業法の一部を改正する法律案」が4月12日に閣議決定され、今国会に提出されました。しかし、この法案は、専門委員会報告に示された工程表を巧妙に書き換えて実施の時期を後退さています。さらに、法案そのものもいまだ審議日程がたたず、今国会での成立が危ぶまれています。自民党政権の誕生以来、情勢は改革に反対してきた電力会社の意向に沿う方向にジリジリと移行しつつあると言えます。
消費者が電気を選べる制度をつくり、私たちの選択で日本から原発をなせるようにするためには、少なくとも専門委員会報告が示した改革の工程表を遵守して改革を進め、省エネルギーと再生可能エネルギー(風力、太陽光など)やコジェネレーションなど分散型電源を活用する社会を一日も早く実現する必要があります。
そのための活動の一環として、日消連は他の6団体と共同で「『電気事業法の一部を改正する法律案』への要望書」を衆参両院経済産業委員会委員宛に提出しました。やっと動き始めた電力改革がなし崩し的に遅らされ、内容が骨抜きにされないよう、今後とも電力システム改革の行方を厳しく監視していく必要があります。
(共同代表・真下俊樹)
衆議院/参議院 経済産業委員会委員 各位
「電気事業法の一部を改正する法律案」への要望書
2013年5月17日
日本消費者連盟
WWFジャパン
日本ソーラーエネルギー教育協会
FoEJapan
eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)
日本環境法律家連盟(JELF)
電力改革プロジェクト
2013年2月に発表された「経産省電力システム改革専門委員会報告」を踏まえ、「電気事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、今国会に法案が提出されました。
東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故により、日本は原子力に頼らない社会への転換を迫られています。人が住めなくなるような放射能汚染の危険を伴う原子力発電と決別し、省エネルギーと、再生可能エネルギー(風力、太陽光など)やコジェネレーションなど分散型電源を活用する社会へと向かう決断と実行が求められています。電力システム改革によって、真に自由な競争が促進され、安定的かつ安価な電力の供給が実現され、消費者が主体的にエネルギーを選択できるようになることが求められています。しかし、同法案に示された改革の実施は遅すぎるため、これを最低限早める必要があると考えます。専門委員会報告が示した改革の工程表を尊重し、今国会経済産業委員会で下記の点を審議するよう要望します。
1. 電力システム改革専門委員会報告に示された工程表を早急期に実施して下さい。今国会に提出された電気事業法改正案において、改革の第二段階(電気小売業の全面自由化)、第三段階(法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保と電気の小売料金の全面自由化)を附則(4)①としたすること、特にこれを①2)「2015年法案提出を目指す」と努力目標にとどめたることは著しい後退であり、許されません。遅くとも2017年までに改革を実施するため、同改正案において上記を電事法本則として、2015年に発送電分離の法案提出を行うことを明記ください。
理由:電力システム改革専門委員会報告は、地域独占を廃止し、国民・消費者の自由な電力・エネルギー選択を保障する可能とする新しいしくみをめざすものです。法的分離による送配電部門の中立性確保(発送電分離)は多様な発電事業者と小売事業者が自由に競争すること、再生可能エネルギーを含む多様な発電所が公平に送配電部門に接続すること、送配電網の拡充を計画的に進めること等を推進し、再生可能エネルギーその他の新産業を育成する前提条件になります。法的分離はその第一歩となりえる改革であり、さらに最終的には所有権分離をも視野に入れた、さらなる中立性確保のための改革を進めていくける体制を整える必要があります。これらの発送電分離を早急できる限り早期に実施するために、まずは今回の法的分離の実施時期を明記し、速やかに法改正することがこの改革の要です。
2. 新規発電事業者の参入と公平な競争促進、送配電網の独立性と透明性を確保するために、電事法本則において、新たな規制機関の創設を盛り込むことを求めます。この規制機関は人事・会計等において監督庁や電力事業者から独立した体制とし、情報公開や各種公聴会の義務づけなどにより、国民・消費者の知る権利を守り、その十分な意見表明の機会を設けるべきです。
理由:送電網を所有する一般電気事業者が、不当な理由により新規電気事業者を不公平で差別的な扱いをすることのないよう、監視・指導する機関が必要です。また、新規事業者の参入を事実上阻んできた託送料金の根拠を開示するよう義務付け、適正化に向けた規制の強化と監視を行い、託送料金の根拠を精査し、透明化を徹底することが急務です。さらに、卸電力市場や小売市場の取引など、改革の実施に伴いさまざまな監視を行う必要があります。
3. 電事法改正案附則(4)①1)電気小売業の全面自由化(一般家庭で事業者を選択可能にする)を同法本則とし、2016年までの実施を明記するとともに、ピーク時の需要カットやデマンドレスポンス(適切な需要抑制の料金メニュー)の導入を事業者に義務づけることを求めます。
理由:需要増を見込んで原子力発電所を増設してきた従来の方針を180度転換し、今後とくに大口需要家に向けて省エネのインセンティブを高める料金メニューの創設が不可欠です。
4. 電事法改正案本則(1)①「広域的運営推進機関」(広域系統運用機関)の創設にあたって、需給逼迫など緊急時の利用だけではなく、平常時の広域運用を前提とすること、新規電源の接続受付は再生可能エネルギー電源の優先的系統接続、優先給電とすることを求めます。
理由:広域系統運用機関は、震災の際、異なるエリア間で電力を融通できなかった反省から、エリアを超えて系統接続し、安定的な電力需給調整を目的とする機関です。しかし発電量が変動する再生可能エネルギーの普及には、広域系統運用と優先給電を徹底させることが不可欠であるため、平常時からの広域運用を明記すべきです。消費者が主体的に電気を選ぶためには、再生可能エネルギー事業者が参入しやすい環境づくりが必要であり、系統情報の公開と優先給電を原則として、優先給電を原則として、中立性を厳密に確保した広域系統運用機関が接続業務を行うべきです。
連絡先:特定非営利活動法人 日本消費者連盟 担当:真下(ましも)
〒162-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19 アーバンヒルズ早稲田207号
電話:03-5155-4765
FAX:03-5155-4767
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