日本消費者連盟
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福島の子どもたちの尿からセシウム ──遅々として進まぬ子どもの被曝対策

東京電力福島第一原発の事故による被災現地の人々の被曝の深刻さが、ますます明らかになってきています。この現状の中で、とりわけ子どもたちへの被曝を軽減する措置を講ずることが喫緊の課題です。しかし、国や県は適切な措置を取ってきておりません。「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」(子ども福島)をはじめとして、いくつかの団体が精力的に文部科学省等と交渉を重ねてきていますが、決め手になるような措置は取られていません。

学校外での被曝を含めず

文部科学省が福島県内の各機関に通知した「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」(2011年5月27日付)にも、極めて大きな問題があります。その内容は、①全校に積算線量計を配布し11年6月1日からモニタリングを実施、②11年度、学校において児童生徒等が受ける線量ついては当面年間1ミリシーベルト(mSv)を目指す、③校庭・園庭の空間線量率が毎時1μSv以上の学校の土壌除去について財政支援を行なうというものです。しかし、以下の事実が明らかになっています。

(1) 「11年度1mSv」の意味は学校内における被曝量の目標値であり、登下校を含め学校外における被曝量は含めない
(2) 学校給食やほこりの吸引等による内部被曝は含めない
(3) 11年4月の始業式から12年3月の始業式までの間であり事故直後の被曝量は含めない
(4) 計測は学校に1台配布している積算線量計により6月1日より開始。なるべく子どもの行動を代表するような教師が持ち、始業から終業まで計測。4~5月は、実測による積算線量から推測する
(5) モニタリングの結果は、これまで高い線量を示している55校は2週間に1回、それ以外は1か月1回の報告とし文科省のホームページで公開する

最終的には、学校外も含めて全体で1mSvを目指す認識だと言いますが、「今年度1mSv」はこのための通過点で、あくまでも目標ですので、超えた場合に何らかの措置がとられるわけではありません。 これでは1mSvを守ることはできません。被曝量低減のためには、土壌除去以外にも避難、疎開、夏休みの前倒し、サマーキャンプなどが考えられますが、これらについては、支援がなされません。

早急な内部被曝調査を

11年6月30日、子ども福島では、この当面の対応に対して、菅直人原子力災害対策本部長宛の「子どもたちに対するあらゆる被曝低減策を求める」申し入れを担当官に手渡し、文科省の担当官も同席のうえ、他団体とともに要請交渉をしましたが、納得のいく回答は得られませんでした。 また子ども福島では同日、フランスの独立系放射線測定機関、西部放射能管理協会(ACRO)の協力を得て実施した、6~16歳の男子6人、女子4人(1人を除き採尿時まで福島に在住)の尿検査の結果を公表。全員の尿からセシウム134・137が検出され、高い確度の内部被曝の可能性が示唆されたとしました。二つのセシウムの値が同程度であることから、この内部被曝は今回の福島第一原発の事故による影響であるといえます。 尿中から検出されるセシウムは、呼吸器からと食物からの両経路があるので、体内被曝量を推定するのは今回の検査では難しいとのことですが、ホールボディカウンターを用いた行政による内部被曝の検査が早急に求められます。

(富山洋子)